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ラグビーニュージランド代表(オールブラックス)が踊るパフォーマンス、『ハカ』がとても有名で、今やラグビーにとどまらずニュージーランドのいろいろなセレモニーなどでも披露される国民的舞踏にまでなっていますね。

ニュージーランドのワイン
"HAKA"

今大会2019年ラグビーW杯においても、W杯3連覇を目論むNZオールブラックスの活躍は見ものとなっています。私たちも彼らのハカを見る機会に何度か遭うことでしょう。ラグビーW杯の楽しみの一つでもあります。

ハカとマオリとニュージーランド

ご存知のように、本来ハカはニュージランドの先住民マオリ族の戦士の踊りでした。戦士が戦いの前に自らを鼓舞し相手を威嚇する目的の踊りが目立ちます。

しかし、民族舞踏としてのハカは戦いの前の踊りだけではなく、歓迎、・祝賀・葬儀などでも踊ります。

ハカを踊るマオリ族はニュージーランドにイギリス人が入植する前から先住していた人々です。
本来はTangata Maori(タンガタ マオリ)と名乗っていたそうです。Tangataは「人間」、 Maoriは「普通の」という意味でつまり「普通の人間」ということです。何に対して普通の人間かというと、入植してきた西洋人に対して、元から住んでいる私たち先住民が普通の人間であるということでしょう。

◉2019年9/21 NZ代表のハカ 「カパオパンゴ」(NG vs 南ア)↓

アオテアロア Aotearoa

「ニュージーランド」は「アオテアロア」 (Aotearoa) という別名があります。
アオテアロア (Aotearoa) はマオリの言葉で「白く長い雲のたなびく地」の意味だそうです。
ニュージーランドには国歌(national anthem of New Zealand)が2つあります。

  • God Save the Queen(神よ女王を守り給え)
  • God Defend New Zealand(神よニュージーランドを守り給え)

2つのうちよく歌われていて馴染みのあるのは「神よニュージーランドを守り給え」の方です。オールブラックスのラグビー試合で歌われるのもこちらです。斉唱の際には歌詞は英語とマオリ語の両方で歌われます。この国歌のマオリ語名も「アオテアロア」 (Aotearoa) です。

ことほど左様にマオリはニュージーランド社会に不可欠な存在でありましょう。

 

ニュージーランド 国歌 「神よニュージーランドを守り給え」

2つのハカ「カマテ」「カパオパンゴ」

こんにちのラグビーとハカの密接な関わりとしては、1888年にマオリの全国代表チーム「ニュージーランド・ネイティブズ」が初めてマカを披露したことに端を発しています。

オールブラックスが最初にハカを踊ったのは1905年イギリス遠征の際だったとされていますから、ラグビーの国際舞台でも100年以上も受け継がれていることになります。

「ハカ」とはマオリ族の踊りの総称です。武器を待たずに踊るハカは「タパラヒ」と言います。

現在オールブラックスが踊るハカには2種類があります。
カマテ(Ka Mate)」と「カパオパンゴ(Kapa O Pango)
です。

ハカ 「カマテ」

カマテは1810年にンガティトア(Ngāti Toa)部族長であったテ・ラウパラハ(Te Rauparaha)が作ったということになっています。200年もの歴史があります。

次のような逸話があります。

テ・ラウパラハは敵の部族の攻撃から身を隠し地下の食品貯蔵庫に身を隠していました。敵に殺されることを承知の上で食品庫から這い上がって外へ出てみると、まばゆい光とともに彼の親しい部族の長が迎えてくれたのでした。幸運にも生き残ったことへの喜びと感謝を込めて踊ります。その舞踏がカマテです。

有名な歌詞の冒頭は聞いたことがおありだと思います。
カ マテ! カ マテ!  Ka mate, ka mate!(リード)
カ オラ、カ オラ!   ka ora! ka ora!(コーラス)
カ マテ! カ マテ!  Ka mate, ka mate!(リード)
カ オラ、カ オラ!   ka ora! ka ora!(コーラス)
(以下 略)

その意味は↓ 。
私は死ぬ! 私は死ぬ!
私は生きる! 私は生きる!
私は死ぬ! 私は死ぬ!
私は生きる! 私は生きる!

ハカ 「カマテ」は死に直面していた人間が、生きていることへの喜びと感謝を表現している歌舞ということになります。


ハカ 「カパ・オ・パンゴ」

ハカ カパ・オ・パンゴはオールブラックスのために作られた比較的新しいハカです。(すでにあったKo Niu Tireni というハカを基本としている。)
ナティ・ポロウ族出身のデレク・ラーデリという人がオールブラックスのために特別に作ったハカです
2005年の南アフリカ戦で披露されました。

カパ・オ・パンゴ(Kapa o Pango)kapa(チーム)、o(の)、Pango(黒)で「黒のチーム」という意味。まさにオールブラックスを指しています。

オールブラックスのホームページにカパ・オ・パンゴの歌詞とその英訳が載っています。
https://www.allblacks.com/Teams/Haka

KAPA O PANGO
Taringa whakarongo!
Kia rite! Kia rite! Kia mau!
Hi!

Kia whakawhenua au i ahau!
Hi, aue! Hi!

Ko Aotearoa, e ngunguru nei!
Hi, au! Au! Aue, ha! Hi!

Ko kapa o pango, e ngunguru nei!
Hi, au! Au! Aue, ha! Hi!

I ahaha!

Ka tu te ihi-ihi

Ka tu te wanawana

Ki runga i te rangi, e tu iho nei, tu iho nei, hi!
Ponga ra!

Kapa o pango! Aue, hi!
Ponga ra!

Kapa o pango! Aue, hi!
Ha!

英訳
Let me go back to my first gasp of breath
Let my life force return to the earth
It is New Zealand that thunders now
And it is my time!
It is my moment!
The passion ignites!
This defines us as the All Blacks
And it is my time!
It is my moment!
The anticipation explodes!
Feel the power
Our dominance rises
Our supremacy emerges
To be placed on high
Silver fern!
All Blacks!
Silver fern!
All Blacks!
aue hi!

(☆☆英詩和訳のご参考に☆☆ ignite 発火する、define 定義する、anticipation 期待、explode 爆発する、dominance 支配、supremacy 至上、emerge 現れる、
Silver fern シルバー・ファーン:マオリ語ではPonga)

歌詞の内容は、ニュージーランドの大地とシルバーファーンそして黒装束の戦士たちを讃えています。
歌詞に出てくるシルバー・ファーンはニュージーランドの象徴とも言えるシダ植物です。樹木のように大きく伸びるの木生シダ(もくせいシダ)です。シルバー・ファーンの図柄は1956年からの国章にも取り入られています。
シルバー・ファーン・フラッグ(Silver fern flag)は、オールブラックスをはじめとするニュージーランド・ナショナルチームのロゴマークなどでよく知られています。


シルバー・ファーン  / シルバー・ファーン・フラッグ /  国章


ウォークライ War Cry

ハカは英語ではWar Cry(ウォー クライ)です。War(戦い) Cry(叫び・雄叫び)といったところでしょう。日本では中世の昔から鬨の声(ときのこえ)があります。西洋でしたら古代ローマ人の「Feri, feri!」でしょうか。十字軍の「デウス・ウルト」というのもウォークライの一つでしょう。ラグビーの話からだいぶ逸れてしまいそうですから知ったかぶりはこのあたりで。

ラグビーの試合ではオールブラックスの他にも、パシフィック・アイランド(太平洋諸島)のチームには次のようなウォークライがあります。ウォーダンス(War Dance)ということもあるようです。

  • サモア代表のシヴァタウ(Siva Tau)
  • トンガ代表のシピタウ(Sipi Tau)
  • フィジー代表のシビ(Cibi)

また合同チームであるパシフィック・アイランダーズ(サモア、トンガ、フィジーの3カ国選抜チーム)にもウォー クライがあります。





ハカの問題

先ほど申しましたように、2005年の南アフリカ戦でハカ カパ・オ・パンゴは披露されました。

この試合は31ー27でオールブラックスが勝ったのですが、試合後この踊りに対する批判があったそうです。踊りの後半に喉首を掻き切るような所作があり、相手方はこれに対して嫌悪感を持った、ということでした。
これに対してのオールブラックスは、首を切ることを示す動きではない、自身の体内に生命力を引き込むことを表す動きである、とその意を説明をしました。

他方では次のような意見もあります。曰く
「オールブラックスは試合前のハカが認められているのだから、試合に対して精神的な優位性をもたらされるのではないか。」
一理あるような気もします。

また、ハカを前にしたチームはハーフウェイラインから10m距離を取らなければならないルールがあります。2011年のW杯決勝でフランス代表チームがこの10m禁を破って罰金を科されたことがありました。

対戦チームもいろいろ策を練って対処しますが、敬意を欠く行為は批判されます。オールブラックスがハカを踊っている間、オーストラリア代表が完全無視を決め込んだことがあり、当時批判されたものです。

ニュージーランドの人たちにとってはハカは単なるパーフォーマンスではなく、神聖な伝統であるということになるのでしょう。

マオリの伝統文化である神聖なハカを、営利目的で企業などが利用することにニュージーランド政府は憤りをあらわにしたことがありました。

イベントやCMなどでハカを使いたい場合は、マオリ族の当該団体に許可申請しなければならない法律が数年前にニュージーランドで成立しました。
それはオールブラックスであっても、事前にマオリ族の当該団体に許可を得てからハカを踊ることができるということです。

この法律はニュージーランドの国内に通用しますが、海外では効力がないのです。当局では海外企業もこの法律を尊重してくれルよう促しているそうです。

この法律のできる前のことですが、かつて日本の有名女性歌手と「ハカボーイズ」という男性グループからなる踊りが清涼飲料水のTVCMにありました。「伝統的なハカを正しく伝えていない」との指摘や、男性グループの黒シャツがオールブラックスのユニフォーム似ているとの警告がありました。またイギリスで紳士服の広告にハカが利用されたこともあります。これらの事例をニュージーランド政府は"悪用"としています。


以上、ハカについて縷縷綴ってきました。ラグビーには試合もさることながらいろいろな愉しみがひそんでいます。。。ハカを見ることもその一つですね。このサイトの知ったかぶりがそのたのしみの一助にでもなりますればうれしいのですが。

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